そして受験シーズンに突入した。
私は無事に第一希望の高校に受かった。
そして高田くんは·····。
落ちてしまった。
高田くんの第一希望の高校の偏差値が、ものすごく高いことはわかっていたけれど、高田くんなら余裕で受かると思っていた。
さらに高田くんは第二希望の高校にも落ちてしまい、第三希望の高校に行くこととなった。
そして少しずつ歯車は狂って行った。
受験で上手くいかなかった高田くんの気持ちを何も考えられず、私は自分の気持ちを伝えることしか考えていなかった。
受験が終わり、どんどん少なくなっていく卒業までの残された日数に私はただただ焦りを感じていた。
そして中学最後のバレンタインに、私は全てを懸けた。
家のインターホンを押してからのシミュレーションを何十回も頭の中で繰り返した。
迎えた当日。
夜19時前だったと思う。
自転車をこいで高田くんの家に向かった。
ものすごい爆音で鳴る心臓。
何度か深呼吸をし、自分を落ち着かせ、風で乱れてしまった髪を手で整えた。
震える人差し指でインターホンを押す。
「はい。」
今年も高田くん本人が出た。
名前を告げると、
「あぁ。」と言って高田君が出てきた。
薄紫色のトレーナーを着ていた。
高田くんの後ろで光る人感センサーライトが眩しくて、目がくらむほどだった。
ガサガサと、肩から提げたトートバッグの中からチョコを取り出すと、高田くんへ差し出した。
告白をしなきゃ·····。
シミュレーションの通り言わないと!と、緊張で頭が白くなっているところ、高田くんが先に口を開いた。
「·····今年は勘弁して。」
一瞬、何が起こったのか分からなかった。。。
頭の中が真っ白になり、私は言葉の通りフリーズした。
·····え?
·····「今年は」って、もう今年しかないんだよ?
·····しかも「勘弁して」って、昨年はイヤイヤ無理して受け取ってくれたってこと!?
·····この一年、ホワイトデーの思い出だけで生きてきた私の喜びは何!?
こんな考えが、頭の中をグルグルと回っていたけれど、すぐに我に返り「分かった」とだけ呟くと、自転車にまたがり自宅へ引き返した。
高田くんは困惑した表情をしたまま、微動だにせず立っていた。
私が自転車で去る間は立ち続けていたと思う。
そこからの帰り道のことは覚えていない。
ただただ悲しくて、冬の冷たい空気も目にしみて涙が止まらなかった。
私は高田くんにフラれた。
振られたことも悲しいけれど、高田くんへの想いも終わらせないといけなくて、それが何よりも悲しかった。
そして、長い長い片想いが終わった。
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