人生で初のドキドキバレンタインデーが終わり、高田くんは約束通り誰にも言わなかったようだ(と信じたい・・・)。
気持ちを伝えられなかった不完全燃焼感はあったものの、あの時あれ以上に勇気を出すことはどう考えても無理だった。
でも、それほど近しい間柄ではない人が直接家に持って行ったとなると、気持ちを伝えたも同然だと自分なりに判断をした。
恐らく、高田くんもそういう解釈をしたに違いないと思う。
刻々とせまるホワイトデー
そして1ヶ月が経ちホワイトデーを迎えた。
特にこの1ヶ月、何も無い。
そう、何事も無かったかのように寂しいくらいに何も無かった。
特に高田くんと話すこともなかった気がする。
私の勇気を出した1日が無かったことになろうとしていた。
そしてホワイトデー当日。
春めいた風が時折強めに、開け放った教室の窓から吹き込んでいた。
よく晴れたポカポカ陽気の中、教室の窓から外を眺めていると、ふと隣に高田くんが立っていた。
私は窓の外を見る姿勢。
高田くんは背中を窓に向け寄りかかり、教室を眺める姿勢だった。
今になって思うと、少女漫画の1コマに出てきそうなシチュエーション。
私「!!(言葉にならない)」
高田くん「今日持って行くから、ホワイトデー。家どこだっけ?」
私「・・・・・・〇〇マンション」
高田くん「OK」
私「へ、部屋番号は◯◯◯だよ!」
高田くん「ん。たぶん大丈夫」
表情を変えることをせず足早に去っていった。
どこかの休み時間か放課後の出来事だった気がする。
教室には数人しかいなかった。
そして窓から吹き込む風で強く揺れるカーテンの音に掻き消されて、私たちの会話は誰にも聞かれていないようだった。
高田くんが去った後、爆音を鳴らす心臓を落ち着かせたかった。
激しく揺らめくカーテンの内側に入り、何とか顔の火照りと心臓のドキドキを抑えた。
その日は完全に心はうわの空になってしまい、その後に話した友達との会話など全く頭に入ってこなかった。
下校途中も、今日これから起こることを何度も頭でシミュレーションし、恥ずかしすぎて発狂しそうになっていた。
そして私の心にかかる暗雲が一つ。
そもそも高田くんは本当に来てくれるのだろうか?
口では言ってきてくれたものの、やっぱりナシとなって来ないかもしれない。
高田くんにはそういう面も無くは無い。
たまに掴みどころがないようにも感じる時がある。
不安と期待を抱えて家に帰った。
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