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高田くんへの秘めたる想いを墓場まで

2.小学生の恋
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ある日の放課後、高田くんが

 

「さいみ、さいみ、ちょっと待ってて!」

 

と声をかけてきた。

 

(私の苗字がサイジョウ、なまえがミクのため、苗字&名前の頭文字を取って、「さいみ」と呼ばれていた)

 

何だろう・・・?

 

 

どこかから出したカセットテープを、教室にあったラジカセにセットし再生ボタンを押す。

 

流れ出た曲は、松田聖子さんの「大切なあなた」。

 

冒頭の↓の部分

 

♪めぐり逢えたね 待っていた運命の人に
広い世界でひとりだけ 大切なあなた♪

 

のところで

 

♪ミクに逢えたね 待っていた運命の人に
広い世界でひとりだけ 大切なあなた♪

 

と替え歌をしてきた。

 

・・・えっ!?・・・

 

予期せぬ出来事に呆然としていると、

 

「って、カズが言ってたよ!」

 

と高田くんはニヤリと笑い、教室から廊下へ出ると走って行ってしまった。

 

一体、何が起こったんだ!?

 

内心心臓バクバク。

 

カズというのは、幼稚園からの幼なじみの一人。
親同士も仲が良い腐れ縁だった。

 

でも今は、カズがそれを言ってようが言ってなかろうが、どちらが事実であろうと、正直そんなのどうでも良かった。

 

ただ高田くんがそれを伝えるためにテープを用意して聞かせてくれて、しかも私の下の名前が「みく」であるということを知っててくれていた!!

 

同じクラスなんだから当たり前かと思うけれど、ただそれだけが純粋に嬉しかった。

 

そして「みく」という単語が、高田くんの口から直接発せられたことにも胸が高鳴った。

 

 

家に帰ってからも、高田くんから放たれた言葉を何度も繰り返し思い出しては、心臓がいつもとは違う音で鳴る。

 

こんなに緊張することも、こんな感情になることも初めての経験で、自分自身が一番驚いていた。

 

それから私の高田くんへの想いは一気に急上昇。

 

常に学校でも目で追ってしまうし、姿が見えないと探したりもした。

 

土日に会えないのが寂しいと感じ、毎日学校があれば良いのにとすら感じた。

 

高田くんが男子と楽しそうに話していたり、笑っている姿を見られるだけで幸せだった。

 

ただ、当然のことながら高田くんはモテた。

 

しかも高田くんのことを好きだという女の子は皆、女子の間でも一目置かれるような子たちばかり。

 

私はたくちゃんの経験から、絶対に好きな人をばらさないと決めていたので、一切言わなかった。

 

おそらく態度でバレバレだったのだろう。

 

「高田のこと好きでしょ?」

 

と、よくライバル女子から聞かれたけれど、

 

「そういうのじゃないんだよ」

 

と答えていた。

 

この気持ちを私の中だけで大切にしたい。

 

ただ、それだけ。

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